はじめに 近年、「リミナル・スペース(Liminal Space)」という美学が、インターネットを中心に大きなムーブメントとなっている。誰もいない廊下、薄暗い無人のプール、果てしなく続く空っぽのオフィス——。本来人々で賑わうはずの場所に誰もいないという不気味な空白が、強いノスタルジアや不安とともに共有され、画像・動画・音楽を通じて急速に拡散した。 Photo by yi しかし、こうした「不在」を強調する空間表現は、決して近年の流行に端を発したものではない。その原型は、2010年頃のインターネット・アンダーグラウンドシーンにおいてすでに顕在化していた。荒廃したショッピングモール、誰も